社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~70
2026/03/19
【みなし贈与/同族会社に著しく低い価額で出資持分の譲渡があった場合/出資の評価】
東京高等裁判所平成26年(行コ)第457号各贈与税決定処分取消等請求控訴事件
平成27年4月22日判決(Z265-12654)
〔判示事項〕
本件は、g(控訴人mの母、控訴人nの祖母)が自己が有していたC社出資の全部をr社及びt合名会社に譲渡したところ、芝税務署長が、本件各譲渡が時価より著しく低い価額の対価でされたもので、その結果いずれも同族会社であるr社の株式及びt合名会社の持分の価額が増加したことから、その株主等である控訴人らは相続税法第9条にいう「対価を支払わないで」「利益を受けた」者と認められ、同条により、上記の価額が増加した部分に相当する金額を控訴人らがgから贈与により取得したものとみなされるなどとして、贈与税の決定処分等を行ったことから、控訴人らがその取消しを求める事案である。
控訴人らは、相続税法第9条の「利益」は資本等取引に起因する利益であることを要し、相続税法基本通達9-2⑷のような損益取引による利益はこれに当たらないと主張する。
しかし、相続税法第9条の「利益」が法文上その発生原因となる取引を限定していると解すべき理由はない。また、相続税法基本通達9-2⑷は、同族会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合、その譲渡をした者と当該会社ひいてはその株主又は社員との間にそのような譲渡がされるのに対応した相応の特別の関係があることが一般であることを踏まえ、実質的にみて、当該会社の資産の価額が増加することを通じて、その譲渡をした者からその株主又は社員に対し、贈与があったのと同様の経済的利益を移転したものとみることができるから、株式又は出資の価額増額部分に相当する金額を贈与によって取得したものと取り扱う趣旨と解されることは、原判決が説示するとおりである。
このような趣旨からすれば、控訴人らの主張するような取引による区別をする必要はないというべきである。r社の取引先である13社のC社出資取引に係る判断については、本件13社がいずれも有力酒造会社等であり、r社がその商品の重要な販路となる酒類等の大手卸売会社であるという特殊な個別的関係に基づき、将来にわたるrグループとの取引関係の維持又は強化という売買目的物の客観的交換価値とは別個の考慮要素が反映され、C社の支配継続を望む先代y及び控訴人mらの意向に沿って、購入や売却の取引に応じていたものであって、控訴人m及びその同族関係者の意向に反するような持分権者としての権利行使をする意図は終始なかったと推認することができる。
したがって、このような特殊性を有するt合名会社と本件13社との間のC社出資の売買取引をもって、目的物の客観的な交換価値に即した売買実例として適切と認めることはできず、同取引における1口5,000円の価格をもって、C社出資の本件各譲渡時の時価でということはできない。
控訴人らは、控訴人m及びt合名会社においてC社を実質的に支配するような関係にはなく、本件において評価通達の定める評価方式以外の評価方式によるべき特段の事情はないなどとして、C社を控訴人m及びt合名会社の同族関係者に当たるとした原判決を論難する。
しかし、C社の設立から本件13社がt合名会社に対しC社出資を売却するまでの経緯等の原判決が説示する事情に照らせば、C社は設立以来控訴人mと先代y、g及びt合名会社が実質的に支配してきたものと認められる。
このような事実関係を踏まえると、C社出資の扱いにおいて評価通達188⑴等を形式的に適用することはかえって同通達188及び同通達188-2の趣旨にもとる結果となるから、同通達の定める評価方式以外の評価方式によるべき特段の事情があり、C社は控訴人m及びt合名会社の同族関係者に該当するというべきことは、原判決が説示するとおりである。
評価通達185ただし書の適用について控訴人らは、C社は控訴人m及びその同族関係者によって実質的に支配されていたものではないとして、C社出資の評価に当たり評価通達185ただし書の定める評価方法を適用すべき旨を主張する。
しかし、関係証拠によれば、C社は控訴人m及びその同族関係者によって実質的に支配されていたと認められることは、上記のとおりであるから、控訴人らの上記主張はその前提を欠く。
以上によれば、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとする。地裁(原審)で詳細な事実認定をしており、それらを「しないこと」が証拠ととなります。非常に長文になるため、TAINSコードZ264-12556、平成26年10月29日判決を参照してください。
なお、一般社団法人、一般財団法人、各種持株会でも同様のことがいえます。実質支配下にあったかの認定プロセスは同様となります。持株会が機能していない場合、同族特殊関係者間代表(直系オーナーであることが多いです)の持分に持株会持分が加算されてしまう、という当局指摘も従来、租税実務の現場では頻出です。それに至る事実認定プロセスは平成23年9月28日裁決と近似が通常です。
従業員持株会については、今から組成する、という方はほとんどいないと思われますが、相続対策、事業承継対策を念頭にどうしても組成したい、という方は細心の注意をしながら証拠を形成する必要があります。
・前提としてなぜ、いま、従業員持株会が必要であるのかの経済的合理性を完備した文書を用意
・節税効果の検討資料は当局調査の念査項目となり得る
・持株会は絶対に機能させる(維持、管理等々自身が実働している)必要がある、運営、管理、維持を自身でしていることに関する全ての証拠が必要
※伊藤俊一先生の講義は『日税ライブラリー研修』でご受講が可能です。
『日税ライブラリー研修』の詳細・申込はこちら。最新の伊藤先生の研修はこちら。
